(なんであんなに、泣けちゃったんだろうなぁ)


怖かったからって。色々な事に安堵したからって。あそこまで泣く事は無かったんじゃないの? 私。


(子供じゃないんだからさ……)


背伸びで軽くストレッチをしつつ、私は昨晩の私を反省する。

とはいえ。

自分のした行いを冷静に振り返るなんて、やっぱり無理だ。思い返したら、恥ずかしくなる事しかしてないじゃないか!


「……私ってば!」


次の瞬間、部屋着姿で私は身体を固まらせていた。

散々泣いて迷惑かけて。

更には、部屋までついてきて貰った挙句に眠れるまでいてくれとか……。図々しいでしょ、やっぱ。

しかも、私……お風呂入ってたし! 結城さん部屋に置きっぱにして、お風呂入ってたし!


(うわー。バカじゃないの私?)


何もしません、と言っていた結城さんを思い出すと、後悔やら何やらが押し寄せてきた。

彼がそんな発言をした時、私はすでにそういう事をやらかしていたのだ。結城さんが本質的には紳士然な人だという所に、自分は随分救われていた……としか言いようがない。

普通なら、襲われていても文句を言えない状態だったのだから。無防備にも程があるってモノ。私は、隙だらけだった。

けれど、……昨晩の私達には何事も起きなかった。

そう。何も。


「……」


結構強引な所のある結城さんだけど、思えば、今までだってこちらの意を完全無視した様な行動を取った事は無かった気がする。


「……」


私が深く考えもしないでお風呂に入っている時、結城さんはこの部屋で正座し静かに待っていた。その姿を思い出して……。

あちゃー、と私は頭を抱えた。

私は彼を少し誤解しているかもしれない。謎も多く、何を考えているか分からない人だけど、いつもさりげなく私を気遣ってくれているのは確かなのだ。

だとすれば、私はもっと結城さんと向き合わなければならないんじゃないかな?

自分の胸にモヤモヤと残る、この微かな不機嫌さをちゃんと知るためにも。