(……ん?)
大きな手に包まれる手。お砂糖は私の手から移動する事無く、自分の中に納まったまま。結城さんはお砂糖を受け取るんじゃなく、私の手をしっかりと押さえていた。
「あ、あの……結城さん? お砂糖を……借りに来たんですよね?」
「ええ。でもそれは口実でして」
「はっ!?」
(こ、こここ口実!?)
慌てて引っ込めようとした手はがっしり掴まれているので、どうにも動かせない。
突然変な事を言いだした挙句、また妙な雰囲気を醸し出す結城さんが私に一歩近づいた。
だからもう……何なんだこの人は!
この間といい、今日といい、私をからかってるんだろうか? だとしたら、とんでもなく悪趣味だ。私が男に免疫無いのも知っててやってるに違いない。
怪訝顔を向ける私に、結城さんの口元が弧を描く。
私の反応は予想済み、でもそれは関係ないと言わんばかりに、落ち着きはらった口調で彼は言った。
「本当は、花音さんのお時間をお借りしたいと思い伺ったんですよ」
(私の時間を借りに来た?)
結城さんの言葉に首を傾げながらも、その意味を解釈しようと試みる。
この場合、考えられるのはこれ位しか……
「それって、私を誘いに来たって事ですか?」
「さすが花音さん。その通りです」
結城さんの瞳が嬉しそうに細まった。
「あー……そうですか。お誘いですか、おさそいねぇ……」
事情は理解しました。しましたが……。それならば何故普通に誘いに来ないのでしょうか。この砂糖のくだり必要無いのではありませんかねっ!?
いまだ掴まれたままの手は、完全に行き場を失ってる。離そうとしても離して貰えないって、これはもう私の逃げ道奪ってるとしか思えなかった。
結城さんのこの“お誘い”は、本当に平和的なお誘いなんだろうか……。私、拉致されないよね!? 穏やかに微笑みながら、とんでもない事やらかしそうな人だよ、結城さんって。
足先でドアを止めるとか、自然な成り行きを作って手を拘束とか、結構あなどれない行動をする。
結城さんは顔が良いだけじゃなく、頭もすごく良い人なのかもしれない……。他人を自分のペースに持ち込むのが得意そうだ。良い意味でも悪い意味でも。
「もしかして……迷惑ですか?」
そして、それをなんとなく理解したくせに彼のペースに巻き込まれてる私は……すごく頭も要領も悪いんだ、きっと。
「いえ、別に迷惑では!……急だったので驚いたというか、なんというか……」
顔を覗き込まれ、私はブンブン頭を振った。頬が熱を持つのを自分でも自覚する。
(だから、距離がいちいち近いんだってば!)
「ああ、良かった。では家へ。夕食ご一緒しましょう」
「へ? 家って……結城さん家?」
「はい。一人で食べる食事はどうも味気無くて。でも、花音さんが一緒なら美味しくいただけそうですね」
靴箱の上に置いてあった私の家の鍵を手に取ると、結城さんはにこやかに笑った。
大きな手に包まれる手。お砂糖は私の手から移動する事無く、自分の中に納まったまま。結城さんはお砂糖を受け取るんじゃなく、私の手をしっかりと押さえていた。
「あ、あの……結城さん? お砂糖を……借りに来たんですよね?」
「ええ。でもそれは口実でして」
「はっ!?」
(こ、こここ口実!?)
慌てて引っ込めようとした手はがっしり掴まれているので、どうにも動かせない。
突然変な事を言いだした挙句、また妙な雰囲気を醸し出す結城さんが私に一歩近づいた。
だからもう……何なんだこの人は!
この間といい、今日といい、私をからかってるんだろうか? だとしたら、とんでもなく悪趣味だ。私が男に免疫無いのも知っててやってるに違いない。
怪訝顔を向ける私に、結城さんの口元が弧を描く。
私の反応は予想済み、でもそれは関係ないと言わんばかりに、落ち着きはらった口調で彼は言った。
「本当は、花音さんのお時間をお借りしたいと思い伺ったんですよ」
(私の時間を借りに来た?)
結城さんの言葉に首を傾げながらも、その意味を解釈しようと試みる。
この場合、考えられるのはこれ位しか……
「それって、私を誘いに来たって事ですか?」
「さすが花音さん。その通りです」
結城さんの瞳が嬉しそうに細まった。
「あー……そうですか。お誘いですか、おさそいねぇ……」
事情は理解しました。しましたが……。それならば何故普通に誘いに来ないのでしょうか。この砂糖のくだり必要無いのではありませんかねっ!?
いまだ掴まれたままの手は、完全に行き場を失ってる。離そうとしても離して貰えないって、これはもう私の逃げ道奪ってるとしか思えなかった。
結城さんのこの“お誘い”は、本当に平和的なお誘いなんだろうか……。私、拉致されないよね!? 穏やかに微笑みながら、とんでもない事やらかしそうな人だよ、結城さんって。
足先でドアを止めるとか、自然な成り行きを作って手を拘束とか、結構あなどれない行動をする。
結城さんは顔が良いだけじゃなく、頭もすごく良い人なのかもしれない……。他人を自分のペースに持ち込むのが得意そうだ。良い意味でも悪い意味でも。
「もしかして……迷惑ですか?」
そして、それをなんとなく理解したくせに彼のペースに巻き込まれてる私は……すごく頭も要領も悪いんだ、きっと。
「いえ、別に迷惑では!……急だったので驚いたというか、なんというか……」
顔を覗き込まれ、私はブンブン頭を振った。頬が熱を持つのを自分でも自覚する。
(だから、距離がいちいち近いんだってば!)
「ああ、良かった。では家へ。夕食ご一緒しましょう」
「へ? 家って……結城さん家?」
「はい。一人で食べる食事はどうも味気無くて。でも、花音さんが一緒なら美味しくいただけそうですね」
靴箱の上に置いてあった私の家の鍵を手に取ると、結城さんはにこやかに笑った。