「で? そっちは?」

「はい?」


私が立つ生活雑貨コーナーに商品を補充しながら、田所さんはニヤリと笑った。


「こんな時間にココで買い物って……。もしかしてお泊まり準備?」


私の持つカゴを覗いて。棚にあったトラベルセットを寄越してくる。

とんだ誤解だ! こんな所に突っ立ってたのが裏目に出てしまった。


「違いますよっ! ただ暇潰しに来ただけなんですから!」

「あ、そうなの? なんだー。スクープかと思ったのに」


そう言って辺りをキョロキョロ見る田所さん。田所さんの言いたい事が分かって、私は「言っときますけど」と声を低くした。


「彼氏と一緒……とか無いですからね? それ以前に彼氏なんていないし!」

「ハハハ。そりゃすまん」


トラベルセットを棚に戻し、仕事を再開する田所さんは、


「じゃあさー、花音ちゃん」


それまでの明るい口調から一転、諭す様なそれになった。


「ちょっとした買い物でも、こんな時間に女の子が一人で来るのは駄目だよ? なんかあったら危ないでしょ」

「うん。まあ……そうなんですけど……」

「家近いの? 俺、ちょっと抜けて送ってあげようか?」

「え!? いや、大丈夫ですって! すぐそこのマンションだから!」


面倒見のいい人だと思ってたけど、まさかここまでいい人だったとは。

ほっといたら本当に仕事を抜けて送ってくれそうな勢いの田所さんを、私はジェスチャーで抑えた。

そう? と返ってくる返事。


「じゃあ、早く会計して帰んなさい」

「ふふっ、了解です。ありがとうございますね」


お世話焼きの店員さんに笑って。

私は結局、時間潰しそこそこにレジに向かう事にした。

満足げな表情の田所さんは「またねー」と商品を振っている。

それがストッキングなもんだから、私はさらに可笑しくなって笑ってしまった。