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ペットボトルのお茶と小さな菓子パンをひとつ。とりあえずそれだけすぐに選んでから、私は店内をあてもなく歩いた。
時間潰しのつもりで来ても、雑誌を立ち読む気もないからちっとも時間は潰せない。
(どうしよ……)
生活雑貨のコーナーは人も通らないので、なんとなくぼんやりそこにいると……
「あれ? 花音ちゃんじゃん」
と声をかけられた。
……ん? この声は……。
「田所さん。何してんの」
「何って……働いてる」
「それは見ればわかります。本屋の後、ここでもバイトしてんですか?」
「他にも色々やってるけどね。今日はココ。ほら、十時以降って時給良いじゃん? 朝までやると結構稼げるんだよねー」
「……あぁ……時給……」
……。
この人、何の為に大学行ってるんだ? ていうか、朝までって……。いつ寝てるんだろ。書店のバイトは昼間フルで入れてるのに。
謎の生態をみせる田所さんは、寝不足の雰囲気も全く感じさせずイキイキと働いてる。タフな人だ。