「お願いがあるんです」
「お願い……?」
私が警戒してるのを感じたのか、結城さんはちょっと困った様な顔をしながら肩を竦めた。
しかし、やっぱり彼は抜け目ない人だ。さりげなく足先でドアを押さえていて、私に閉められない様にしている。
悪徳訪問販売のセールスマンみたいじゃん!
「な、何ですか、お願いって」
「お砂糖、貸してくださいませんか?……もし宜しかったら、なんですけど」
「は? 砂糖?」
「はい、お砂糖」
出てきたお願いは「この商品買ってください」という高圧的なそれではなかった。むしろ、超低姿勢で控えめなお願い。
それにしても……砂糖……ですか。
「ちょっと切らしてしまいまして」
「結城さん、お料理するんですか!?」
「勿論しますよ。料理は得意分野ですので」
それは意外だ!!
イメージでは、高級フレンチレストランとかで優雅に食事してそうなのに!
自炊とか、縁無さそうなのに!
……あくまでこっちの勝手なイメージだけど。
へぇ~、と妙に感心してしまった私は、結城さんのお願いを快諾することにした。快諾って言うのも大袈裟か。お砂糖ぐらいで。
こういうマンション住まいは、下手するとご近所さんがどういう人だか知らない場合が多い。実際、私も結城さん以外の人はよく知らなくて、管理人のオジサンと挨拶を交わす程度だった。
お砂糖の貸し借りとか、いかにもご近所付き合いっぽくていいじゃないの。人間関係が希薄になりつつある現代社会では、こういうお付き合いは貴重な繋がりだわ。
と、どこかのテレビ番組の受け売りみたいな事を考えつつ、お砂糖の入ったホーロー製のポットをキッチンから持ってきた私。
それを、玄関でお行儀よく待っていた結城さんに手渡した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
伸ばされた彼の手が、私の手に触れた。
「お願い……?」
私が警戒してるのを感じたのか、結城さんはちょっと困った様な顔をしながら肩を竦めた。
しかし、やっぱり彼は抜け目ない人だ。さりげなく足先でドアを押さえていて、私に閉められない様にしている。
悪徳訪問販売のセールスマンみたいじゃん!
「な、何ですか、お願いって」
「お砂糖、貸してくださいませんか?……もし宜しかったら、なんですけど」
「は? 砂糖?」
「はい、お砂糖」
出てきたお願いは「この商品買ってください」という高圧的なそれではなかった。むしろ、超低姿勢で控えめなお願い。
それにしても……砂糖……ですか。
「ちょっと切らしてしまいまして」
「結城さん、お料理するんですか!?」
「勿論しますよ。料理は得意分野ですので」
それは意外だ!!
イメージでは、高級フレンチレストランとかで優雅に食事してそうなのに!
自炊とか、縁無さそうなのに!
……あくまでこっちの勝手なイメージだけど。
へぇ~、と妙に感心してしまった私は、結城さんのお願いを快諾することにした。快諾って言うのも大袈裟か。お砂糖ぐらいで。
こういうマンション住まいは、下手するとご近所さんがどういう人だか知らない場合が多い。実際、私も結城さん以外の人はよく知らなくて、管理人のオジサンと挨拶を交わす程度だった。
お砂糖の貸し借りとか、いかにもご近所付き合いっぽくていいじゃないの。人間関係が希薄になりつつある現代社会では、こういうお付き合いは貴重な繋がりだわ。
と、どこかのテレビ番組の受け売りみたいな事を考えつつ、お砂糖の入ったホーロー製のポットをキッチンから持ってきた私。
それを、玄関でお行儀よく待っていた結城さんに手渡した。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
伸ばされた彼の手が、私の手に触れた。