……何でも言い合える仲が理想。結城さん、私とスイーツ談義でも繰り広げるのが夢なワケ?

他に、スイーツについて熱く語り合える仲間がいないのか?


「え。あ、はい……好きです、けど……」


とりあえず、ということで。

結城さんの指がクリームを掬うのをぼんやり見ながら、私は答えた。

細長い綺麗な指。ピアノでも弾いちゃったりしたら、さぞかし絵になるんだろうな……。

なんて思う。

いや、もしそれがピアノを弾くという芸術的動作じゃなく、単に指を振るとか他愛ない動作だとしても……絶対絵になる。絶対。

だって、なんてったって彼は「結城さん」なのだ。

中身はともかくビジュアル的には優れ過ぎてる、超がつく美男。指一本だって無駄にならない。絵にならない訳がない。


(ところでそのクリームどうするんだろ……やっぱ味見?)


真っ白なクリームの味は、すでに自分の知っている味。口の中で溶けた小さな甘さ。真新しい記憶。


「奇遇ですね」


フッと笑みを見せ、結城さんは囁くように言った。


「私も、甘いモノは好きなんですよ」


そうして自分の指をペロリと舐め上げて。

ゆっくりと、焦らす様な舌の動き。それが凄く艶めかしく淫靡に見えて仕方ない。

絵になる男のそういう仕草は、危険極まりなかった。頭の中で警鐘が鳴り響く。危ないぞ、と。


「……っ」


目を逸らしたかった。逸らさなきゃいけない気だってもちろんした。

だけど……出来ないとは!

そうさせまいと、また結城さんが無言の圧力をかけてるのかもしれない。

でも、そうしちゃいけないと、私こそがどこかで思っているかもしれない可能性だってあった。