「ヤキモチって。そういう風に見えるなんて、結城さん変ですよ。私は……ただイライラしてるだけですから」
「イライラ? 何に?」
「何にって……」
そういえば。なんだろう?
考えてみる私。結城さんはそんな私を首を傾げながら見ていた。
刺さりそうな視線を感じて、歩きながら思わず目を逸らす。
(見過ぎでしょ! やりづらいなぁ。もうここは思考に徹して無視しとこう……。えっと、イライラの元は?)
“雑貨屋に付き合うのは慣れてる”っていうことに、疑問が沸いています、ってコト……?
一体誰に付き合って行ってるんですか?
さっきの女性? それとも別の?
やっぱり結城さんってモテるんですね!
「…………」
――ヤ、ヤキモチみたいじゃんっ!
「いやっ、これは違います!」
突然発した私の言葉に、数人が振り向いたり二度見したりした。……まあ、無理もないか。駅の人込みで叫んだら。
一方の結城さんは、無言だったけど顔を逸らし思い切り肩を震わせている。笑われてるのは一目瞭然だった。
その様子で、私の考えてる事が結城さんには全部お見通しなのだと分かってしまう。
わー……。逃げたい気分なんですけど。
「とにかく! 私は今日気分転換をして帰りたい日なんです。独りで物思いに耽りたい日なんです!」
足早に、ていうか最早駆け足に近い状態で、私は改札口を目指した。目的地は人が多いせいでやけに遠く感じる。
「だから……」
すぐ真後ろに長身の存在を感じながら、それでもそれから一歩でも離れたくて、歩幅を意識して大きくした時だった。
身体が、グイッと後ろに引っ張られた。