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 書店でのアルバイトを終えて帰宅したのは、夕方。今日は長時間シフトの上、突発で一人お休みしたものだから本当きつかった……。

「あーつかれたー……」

 ベッドに寝転んで脱力。こうしてしまうと、その後動く気が無くなってしまう。

 いつもならしない行動だけど、今日は別だった。昨日の夜レポートを仕上げる為に深夜まで起きていたので、疲労はいつも以上。とてもキビキビ動ける状態じゃない。

 テレビをつけるのもおっくうな位で、私はしばらくベッドの上で固まっていた。

(あー。お腹空いた……でも作るのかぁ。めんどくさ。こんな時私がお嬢様だったらなー、執事に全部やらせるのに)

 と、現実的ではない夢を見る私。

 執事がご飯を作るのか? 普通はコックだろ、という事はさておき。想像だけではお腹は満たされない。独り暮らしで頼りになるのは自分だけなのだ。……つまり、やるしかないってこと。

「なんか買い置きあったかな……」

 しぶしぶ起きてキッチンに立った。

 冷蔵庫の中身と相談すると、簡単なものならすぐ出来そうだった。いや、もともと凝ったものなんか作らないけど。……作れないけど。

「卵あるし、オムライスでいっか」

 メニューを決めてしまえば体もさっきよりかは動く気になる。よし、と気合を入れてから、私は部屋に戻った。

 まずは着替えだ。部屋着になって心身ともにリラックスせねば。疲れた体は思いのほか重い。のろのろと部屋に戻りタンスを開けた、その時だ。

 玄関チャイムの音が鳴った。

「え、誰?……まさか」

 家に来る人物なんか限られてる。友達か宅配便くらい。だけど、荷物が届く予定は無いし、友達が来る予定も勿論無かった。

 となると……一体誰?

……考えられる人物が一人だけいる。

 甦る、数日前の衝撃的な出来事。あの時もこんな感じの突然訪問だった。

「……やっぱり。結城さんじゃん」

 玄関モニターの小さな画面に映ってる人物が、思い切りカメラ目線で微笑んでいる。

 苦笑しつつドアを開けた。