いや、だけど。でも。

結城さんにだって、隠したいプライベートはあるはずでしょう? もしこの人がそれを嘘で隠したとしても、私がモヤモヤする必要は無いでしょうがっ。


「それで、どこへ行くんですか? 花音さんの行く所は大体想像つきますけど」

「まさか。どんな想像ですかソレ……」

「雑貨屋かコーヒーショップ。貴女は一人で洋服を見に行きたい願望はあるものの、ショップ店員に話しかけられるのが苦で足は遠のきがちです。

その点、雑貨屋とコーヒーショップはのんびりじっくり自分の世界を楽しめますからね。独りに慣れ親しんだ花音さんにはもってこいの場所、という訳です」

「……」


(モヤモヤ、というよりイライラッとくるじゃないの! 私のプライベートはどこに行ったんだ!)


想像が現実より生々しい。

どこで見てきたんだという位、私のパターンを知っている。

ここまで来ると結城さんの何でも知ってる感が少し怖い気がした。この人、どうやって他人の情報を仕入れてくるワケ?


「今日のところは、まず雑貨屋という感じじゃないですか? そこでしばらく時間を置けば、好きなものも見られるし、無理矢理くっついてきたうるさい隣人も追い払える。……男性はああいう場所が苦手ですしね、大抵」

「……」

「私が居辛くなると踏みましたか。中々考えますねぇ」

「分かってるなら遠慮したらどうですか」


怒る気力も無くなって、私の言葉は溜息まじりになっていた。そこまで分かっているのなら、私の今日の気分もいっそ悟って欲しいものだ。

いつもなら帰る所を寄り道する気分。

独りで気分転換したい行動の意味。


何でも知ってる感をチラつかせるなら、ここで力を発揮してくれてもいいのに。


「私なら、雑貨屋のウィンドウショッピングに付き合うなんて事はもう慣れていますので……大丈夫ですよ? 心おきなく楽しんでください」

「そーじゃなくてっ!」

「“そうじゃなくて”?」

「だから……っ」


もぅ! もうもうもうっっ!

(なんなのよ! 本当さっきから!)