誰だろう。

どういう関係なんだろう。

何を話してるんだろう。


短い時間で頭の中は疑問でいっぱいに。プチ混乱。

別に、結城さんが気になって……という訳じゃない。知ってる人の興味深いシーンを見てしまったからだ。それだけだ、それだけ。

ドキドキしながら、私はずらしていた視線をまた元の場所に戻した。

なんかとても雰囲気良さそうに見えた二人だったから、つい遠慮したけど……。

こういう時も、私の“怖いモノ見たさ”は働くらしい。

ん? 怖いもの見たさって……何が?


「あれ?」


戻した視線の先に、想像していた姿はなかった。

柱の所には誰もいない。私の前には、行き交う人だけ。立ち止まって話をしている人はあちこちにいたけど、その誰も結城さんとさっきの女性ではなかった。

いつの間に、二人はいなくなってしまっていたのだ。


「いない……」


えーと……この場合、何というべき?

私はひとり苦笑しながら首を傾げる。

ドラマのおいしいシーンを見逃したような……。逆に損した気分になるシーンを見ないで結果良かったような……。

複雑、なんですけど。やっぱり自分の気持ちがよく分からない!

あっという間の出来事だったので、なんだか夢でも見ている気分だった。そもそも結城さんとこの駅で会うなんてのも、凄い偶然なのだ。

夢と言われたら信じてしまいそうだ。

うーん。それにしても、今日は本当に偶然という二文字がキーワードの様。はてさて、次に来る偶然は?

なんて茶化していたら。