(……なんというか……)
即答で「はい! そうですねっ!」と賛同していいのか迷う。
(零さんが、何を言いたいのか分かる様な、分からない様な……?)
迷いが思い切り顔に出てしまったらしい。彼は、私の反応に少し不満げに頬を膨らませた。なにそれ可愛いんですけど。
「分かんない? アッチは偶然で、俺は必然。花音ちゃんが運命の出会いをどっちで捉えるかで、状況は正反対だぜ?」
「あ。だからさっきあんな事を聞いてきたんですか?」
――運命は、偶然か? 必然か?
「そーに決まってる!」
「でも、それって初めに偶然が無いと、結局成り立たないですよね?」
「花音ちゃん……。意外に頭の回転早いね」
「褒めてます? けなしてます?」
「褒めてんだよ」
「残念そうな顔で言われても説得力無いです」
一通りテンポ良く会話が流れた所で、私達は互いに口を閉じた。
いつの間にか吹き始めた風が公園を横切り、植木をカサカサと揺らす。外灯がまた、数度瞬いた。それだけで公園も周りの道も寒々しく感じた。気持ち、肩が上がってそこに力が入る。
すると、沈黙を破り、眼鏡のフレームの位置を直しながら
「――んだよっ。やっぱり順番って事かよ」
零さんが溜息と一緒に言った。ものすごく悔しそうにも見えたけど、それは私の勘違いだろう。
「あーあ! それなら最初に花音ちゃんと会ってたらなぁ! 俺が彼氏に……って。結構自信あるぜ? 花音ちゃんだって、アイツに会う前に俺に会ってたら、絶対! 俺の方選ぶだろ?」
だってこの人、すっごい笑顔で言ってるし。……結局、それが言いたかったってこと?
(え。私、もしかして……またからかわれた?)
絶対の所にアクセントがあるのが怪しい。怪しすぎる。
やっぱり! と少々大袈裟に顔をしかめて見せた私。それなのに、零さんは華麗にスルーして。
「なーんて話してたら、ホラ、こんな時間だわ。お嬢様は帰る時間だ」
「うそっ。せっかくここまで来たのに!」
「いつだって来れんじゃん。何回も来てんだしな。それに、パンはこの時期一日じゃ腐らねぇよ」
自分のしてる腕時計をこちらに向けてきた零さんだけど、距離のせいでそれはよく見えず、私は携帯で時間を確認した。確かに、この時間だと最寄駅から自宅までの帰り道が心配だ。
(それも気になるけど……)
いつの間にこんなに時間が経ってたのだろう? そんな長話してたつもりは無かったのに。
再び吹いた風の温度は、ちょっと前よりさらに冷えた気がした。真冬も近いこの時期は、あっという間に日が落ちて気温も下がって、そのせいで時間の感覚も狂うのかな?
駅で、思ってたよりも早く日暮れに遭遇したのに驚いたばかりだというのに、私も学習能力が無いというか何というか。
自分に呆れて漏らした溜息に気付いた零さんは、私がやっと帰る気になったと、ホッとした様子で笑った。
「家まで送るな」
「でも、悪いですよ。こっからじゃ電車かバス乗らなきゃだから……」
「女の子がそんな事気にしてんじゃねーよ。遅い時間に一人で帰せるワケないだろ。素直にハイって返事してりゃあイイの!」
カラッとした明るい声で言われたその言葉は、正直嬉しい。私は彼に甘える事にした。
(でも、お店に寄れなかったのはすごく残念……)
寂しい夜の道を歩きながら、未練がましくそう思いながら――。
即答で「はい! そうですねっ!」と賛同していいのか迷う。
(零さんが、何を言いたいのか分かる様な、分からない様な……?)
迷いが思い切り顔に出てしまったらしい。彼は、私の反応に少し不満げに頬を膨らませた。なにそれ可愛いんですけど。
「分かんない? アッチは偶然で、俺は必然。花音ちゃんが運命の出会いをどっちで捉えるかで、状況は正反対だぜ?」
「あ。だからさっきあんな事を聞いてきたんですか?」
――運命は、偶然か? 必然か?
「そーに決まってる!」
「でも、それって初めに偶然が無いと、結局成り立たないですよね?」
「花音ちゃん……。意外に頭の回転早いね」
「褒めてます? けなしてます?」
「褒めてんだよ」
「残念そうな顔で言われても説得力無いです」
一通りテンポ良く会話が流れた所で、私達は互いに口を閉じた。
いつの間にか吹き始めた風が公園を横切り、植木をカサカサと揺らす。外灯がまた、数度瞬いた。それだけで公園も周りの道も寒々しく感じた。気持ち、肩が上がってそこに力が入る。
すると、沈黙を破り、眼鏡のフレームの位置を直しながら
「――んだよっ。やっぱり順番って事かよ」
零さんが溜息と一緒に言った。ものすごく悔しそうにも見えたけど、それは私の勘違いだろう。
「あーあ! それなら最初に花音ちゃんと会ってたらなぁ! 俺が彼氏に……って。結構自信あるぜ? 花音ちゃんだって、アイツに会う前に俺に会ってたら、絶対! 俺の方選ぶだろ?」
だってこの人、すっごい笑顔で言ってるし。……結局、それが言いたかったってこと?
(え。私、もしかして……またからかわれた?)
絶対の所にアクセントがあるのが怪しい。怪しすぎる。
やっぱり! と少々大袈裟に顔をしかめて見せた私。それなのに、零さんは華麗にスルーして。
「なーんて話してたら、ホラ、こんな時間だわ。お嬢様は帰る時間だ」
「うそっ。せっかくここまで来たのに!」
「いつだって来れんじゃん。何回も来てんだしな。それに、パンはこの時期一日じゃ腐らねぇよ」
自分のしてる腕時計をこちらに向けてきた零さんだけど、距離のせいでそれはよく見えず、私は携帯で時間を確認した。確かに、この時間だと最寄駅から自宅までの帰り道が心配だ。
(それも気になるけど……)
いつの間にこんなに時間が経ってたのだろう? そんな長話してたつもりは無かったのに。
再び吹いた風の温度は、ちょっと前よりさらに冷えた気がした。真冬も近いこの時期は、あっという間に日が落ちて気温も下がって、そのせいで時間の感覚も狂うのかな?
駅で、思ってたよりも早く日暮れに遭遇したのに驚いたばかりだというのに、私も学習能力が無いというか何というか。
自分に呆れて漏らした溜息に気付いた零さんは、私がやっと帰る気になったと、ホッとした様子で笑った。
「家まで送るな」
「でも、悪いですよ。こっからじゃ電車かバス乗らなきゃだから……」
「女の子がそんな事気にしてんじゃねーよ。遅い時間に一人で帰せるワケないだろ。素直にハイって返事してりゃあイイの!」
カラッとした明るい声で言われたその言葉は、正直嬉しい。私は彼に甘える事にした。
(でも、お店に寄れなかったのはすごく残念……)
寂しい夜の道を歩きながら、未練がましくそう思いながら――。