私は、がさごそと袋を開けてみせた。零さんは興味深げに中を覗いてから、「へぇ~」と頷く。
「でも、パンなら今日じゃなくても良かったんじゃないのか? 家帰るの遅くなっちゃうじゃん」
「どうせ早く帰っても、独り暮らしだし……。あ! 零さんも一緒にお店でみんなと食べましょうよ」
零さんとみんなの仲が微妙な感じなのは知ってる。でも、せっかく同じお店に集まる者同士。こういう小さい事を積み重ねていけば、いつか仲良くなれるかもしれない。
零さんがそんなに悪い人じゃないって、きっと分かってもらえるはずだよね?
「んー。俺はいいや」
「え? なんで?」
「時間帯的に?」
「時間……帯?」
「そ。アイツいねぇーもん。居なきゃ嫌味も言えねぇー」
「あいつ……」
「花音ちゃんも、期待して行くならハズレだよ。結城はこの時間じゃ、まだ居ない」
「……っ!?」
当たり前の様に言われて、私は一気に自分の頬が熱くなるのが分かった。
なんで分かったんだろ。
みんなへ差し入れとか色々理由を重ねても、心のどこかで零さんの言う“期待”を持ってたこと。
昼間お店に行っても、全然会えない結城さん。
勿論、マンションでは会えるけど、私はあの店でまた会いたいと願っていた。
初めてお店へ行った時、一緒にお茶を飲んだ夢みたいな幸せな時間を、またもう一度過ごしたかったからだ。
最近ゆっくりと顔を合わせる機会が無かったから、余計に。