「あ、ごめん」
「……死ぬかと思った……!」
「いや。見つかったら下手したら死ぬよ」
「は?」
「待って! 説明は後でするから、今は黙って我慢して!」
早口で言う零さんの声が耳元で響いた。声を潜めている分吐息まじりになって、それが私の耳をくすぐりまとわりついてくる。
ぞくっ、と背中に走る衝撃。変な声が出ない様必死に堪えた。
「ごめんね花音ちゃん」
零さんが囁く。
「はい?」
何が? と聞きたかった。でも、そうする間もなく、私は彼に抱きしめられて。
「えっ!?」
(ちょっ……、あれっ!?)
思わず出てしまった声を隠したかったのか、零さんは腕に力を入れる。ギュッと腰と後頭部を押さえつけられたせいで、私達の身体は必要以上に密着した。
(な、な……なにっ! なんなの!?)
この一連の展開の速さに追いついてこい、というのはかなり難しいと思う。
恐怖から驚き、そこからすぐに恥ずかしさ。
いくら結城さんのおかげで男性に抱きしめられる事に少し慣れてきたとはいえ、他の男の人にまでこういう事をされるのは……。困る。
――いや。そういう事では無く。