まさかの美人からの忠告に、私は唖然としつつ「はぁ……」と頷いていた。自分が可愛いなんて当然思っちゃいないけど、魅惑的な微笑みを向けられて言われると勢いに負ける。
恐るべき、美人の迫力……だ。
「それじゃあね。運が良かったらまた会いましょ」
手を振り颯爽と人混みの中に消えていく女性を、姿が見えなくなるまで見つめていた。
彼女の残り香は雑踏の波の中でもしばらくそこに残っていて、一瞬の出会いを強烈に印象付けていく。
女性にときめくという経験は今まで一度も無かったけど、さっきまでの出来事を思い出すと胸がドキドキとしてきて、ふわっと頬に熱を感じた。これは絶対、トキメキという感覚。
結城さんにドキドキするのとはまた違う不思議な感情に、落ち着かない私は歩きながら同じ独り言を呟き続けていた。
「す、素敵だった……! すっごく!」
たまには違う場所に足を運んでみるものだなぁ……と、新たなお気に入りショップ発見と衝撃の偶然に、思わずスキップでもしたい気分になる。
得した感が気持ちを盛り上げる。
パンを手に、プレゼントをバッグに。次の目的地に向かう私は、家を出た時と明らかに違う足取りだった。
これも考えれば、朋絵のグルメ情報と田所さんの恋愛相談からの産物……という事になるのだろうか?
だとしたら、私は本当、友人知人に恵まれたものだ!
これまでの時間を思い返し、遠回りの一日も悪くないとしみじみ思って。
なんだかつい、笑ってしまった。