カウンターから真っ白な帽子をかぶった人がニコニコ笑って手を振っている。
店内に居たお客さんは一斉にその女性を見た。そして、今度は一斉に私に視線を向けてきた。最後に、すがる様な視線が田所さんへ飛ぶ。
「えっ!? ちょ、違いますよ! この子は大学の後輩でバイトの後輩っす!」
「そうなの? また~っ!誤魔化さなくてもいいじゃない」
「いや本当だから! もー勘弁してくださいよ。この間も似たような事言ってましたよね?」
片掌を顔の前に立て私へ謝る仕草をした田所さんが、慌ててカウンターへ戻っていった。
「ちょっと待ってて」と放り出された言葉に頷くしかない私。何やら微妙な空気になってしまった場へ残されてしまう。
後輩か。後輩じゃん。
なんて囁き声が耳に入ってきて……。
聞こえないフリをしつつ私はカフェオレを飲む。トレーの上、食されるのを待ってる生ハムとクリームチーズのベーグルサンドに「なんだなんだ」と心の中で話しかけたり。
(田所さん、人気な店員さんなんじゃん。朋絵のイケメンセンサー、どうしたんだ?)
(もしかして)
彼女のイケメンセンサーは、一般的なイケメンというよりむしろ……
(メンクイセンサーだったのか……?)
少し前、田所さんへの厳しい評価を下していた朋絵の様子を思い出しながら、私はそんな納得いく着陸点を見つけた。
(それなら分かる気がする)
とはいえ、考えれば、朋絵も私も田所さんへなんて失礼な物言いなんだろうか。
……ごめん。田所さん。