――私は自分におきてる奇跡がくれた時間を、もっと自覚して、大事に人生を生きなきゃいけない。




……なんて、昼間から小難しい事を考えた私。

それでも、一人で歩く道が思いの外暗くならなかったのは、前を行く楽しげな女の子達のおかげだった。


(あの子達も同じお店行くのかな? さっきから曲がるトコ一緒なんだよね……)


大学から十分程。車通りの多い市道を一本入れば、住宅街。新しい家やマンションが建ち、憩いの場としての公園もあった。

目的のお店は、その公園の近くにあり、一見普通の家と間違えそうな控え目で素朴な造りをしていた。

それでも普通と違う点を挙げるとしたら、広さだろう。イートインスペースがあるお店は、周りに建つ家よりも大分大きい。豪邸サイズ。

お庭も広くて、そこは天気のいい日はテラス席にしているみたい。テーブルに日傘。緑の芝生。住宅街ともなれば親子連れもいる。小さな子供が芝生を歩く姿がチラリと遠目に見えた。


(こんな可愛いお店、大学から少し歩けばあったんだ)


知る人ぞ知るだよ、と朋絵が教えてくれただけある。この辺の地理を知ってなければ辿り着けないだろう。

目の前まで来たら、そこが普通の家じゃない事は明らかだった。大きなガラスから棚に並ぶパンが見えて。入口には一枚板で作られた看板。

前を歩く女の子達の足が速くなるのにつられて、私の期待も膨らんだ。


「いる? いた?」

「いるいるっ! ラッキーかも今日!」


そんな会話が聞こえる。