『それなら、零さんだけギャフンと言わせればいいのに……。何も花音さんまで振り回さなくても~……』
「それじゃあ、つまらないでしょう」
アッサリ言われた一言に、ナユタは溜息を吐いていた。
どうやら自分も困る事態だって作り出す今の状況を、その対応なども含め、紡は楽しむつもりらしい。
――我がマスターよ、どこまで徹底するおつもりかっ。
……まったくこの人は~~!
ナユタは諦めたように、最後にキンと響く声で言葉を残した。
『もうっ。後で本当に困っても知りませんからね?マスター!』
「はいはい。では、この話は今日はここまでです」
会話を終了させても、紡はひとりクスクスと笑う。
まったくナユタは、キャンキャン吠える子犬の様だ。ああ、そういえば彼女が子犬みたいだと表現した事もあったか。
「別に、後じゃなくても困ったりしてるんですけどね」
ミルクティーを夢中で飲む子猫を見下ろし、紡は「君は呑気で良いですねぇ」と囁いた。
子猫はその言葉に一瞬顔を上げたが、すぐにまたお茶に向かい、紡の声も気にしていない様子でミルクティーを飲んでいる。
「どうしてもそうしたくなっちゃうんですよ。これってアレですか?好きな子を苛めたくなってしまうという、人の定番的心理……?」
構わず独り言を続けていた紡だったが、自分の発言が妙におかしくなってきてしまい、またひとり肩を震わせ笑うのだった。
「そんな可愛い程度のものなら、人生奪おうなんて事まで思いませんよねぇ」