ミルクティーの入った皿とワイングラスを手にリビングへ戻ると、皿は床に。黒猫が待ってましたと言わんばかりに近づいてくる。

紡はソファーに深く座り、苦々しく呟いた。


「全く……。零が余計なコトをしてくれたおかげで、仕事が増える一方だ……」

『やっぱりえげつないですね、零さん』

「私達の意識を逸らせ、身近が手薄になる機会を窺っているのでしょう。ま、無駄な事ですけどね」


再びワインがグラスに注がれた。

間接照明に透かして見れば、濃い紫色の中にルビーの様な輝き。

フッと艶笑を零した紡は、


「どんなに足掻いても結果は変わらない。彼女は私のものなのだから」


そう言って、ルビーが溶けるワインを口にした。


『それって、本当は今すぐどうにか出来るのに、それをしないでわざと周りを困らせてるようにも聞こえるんですけどっ!?』

「フフッ。そう聞こえますか?」

『っ!?うわぁ~、やっぱりマスター光稀さんと同じじゃないですかっ!何なんですか、そのドSっぷりは!?』


花音さんが気の毒だぁ~、とナユタの小声が紡の耳に届く。紡はそれにまたクスッと笑った。