『大丈夫です!花音さんへの心配っぷりは、マスター程じゃありませんからっ』
「………」
『むしろ花音さんの事となると周りが若干見えなくなるマスターの方が心配だと、この間もセツナと話して――』
「ナユタ」
分かりましたから、と頭を抱える紡の口からは深い溜息が吐き出された。
――周りが見えなくなる?
そんな風に見えるのか?自分の行いは。
確かに花音の事は、慎重に、細心の注意を払ってはいるが……。
小さな彼らに心配される程、見境無くなってるつもりは無い……はず。
『でも、どうするんですか?いつまでも誤魔化せる事じゃないですよ?』
「ですから、誤魔化してなんてません」
キッパリ言い放った後は、紡はナユタに言い聞かせる様にゆっくりと静かに話しかける。
「こういう事は順を追わないと相手を混乱させるだけです。彼女を困らせない様、一番良い方法や時期を選ばないと。今は確かに花音さんを誘導しているにも思えますが、状況を踏まえればそれも仕方ない……」
『ちょっと忙しいですからねぇ。今は……』
「知られる訳にはいきません。まだ」
厳しく細まる薄茶色の瞳。照明の明かりに照らされたその瞳の奥に、小さく青い光が現れた。