恋人の定義とは?

付き合うとは何をもって付き合うという事か?


訳が分からなくなってきた私の頭の中は、難しすぎる方程式を投げかけられた時みたいにゴチャゴチャになる。

仕事の内容は明かせません、って言われただけなのに何故こんなに動揺するのか。たかがの一言で、自分の事を突き放された気分になるのはどうしてなんだろう……?


――不安が足元から這い上がってくる様だった。


「あの……花音さん?」


その時の私、一体どんな顔をしていたのか……。相当怖い顔でもしていたのかも。

結城さんは、それまで以上に優しげな声音で私を呼んだ。


「話さないと言ってる訳じゃありませんよ? 私達はお互いをもっと知りあうべきだと思っていますし、今後は積極的にそうしていかなければならないとも思います」

「でも……」

「ね? 落ち着いて。私が動揺させてしまった事は謝ります。私も、花音さんには話していない色々な事、本当は今すぐにでも告白したいのですが……」


一呼吸の間があった。

結城さんが言葉を選んでる雰囲気が伝わる。


「今は、その時期ではないのだという事……。貴女には誠実に向き合いたい。私には花音さんしかいないんです。だからこそ、順を違え失う事だけは絶対にあってはならない」

「………。それって後でちゃんと教えてくれるんですよね?……私に、結城さんのこと……」

「えぇ、勿論。必ず」


笑顔に少しホッとする。

ならば私は、待てばいいんだ。

結城さんには理由があっての事なんだもの。無茶を言って聞き出す必要はない。自分の気持ちを押し出して、彼を困らせる真似はしたくないし……。


(これで……良いんだよね?)