仕事を離れ時間を潰す。
そんなサラリーマンの姿を見た事は沢山あった。
本屋のバイトの前は、パチンコ店のドリンクサービスをしたことがある。そこには、昼間も夕方も、スーツを着た会社員っぽい人が疲れた顔や無表情で何時間も座っていた。
朋絵とお茶しに行ったコーヒーショップでも、パソコンを熱心にいじる人に紛れて、雑誌などに夢中の人を見た事がある。
仕事してます! って人と、わざと時間潰してます! って人の違いは、雰囲気で分かる位には社会勉強を重ねてきたつもりだ。
でも。あんな“暇つぶし”で“サボり”組な人達と同じ事を、この結城さんが……?
――想像……つかないんですけど。
しかしながら、コーヒーショップ云々で考えると絶対的に否定は出来ない。……よね?
ナユタ君はカフェの店長だもの。あの子と一緒に居たとなると……
「――……さん?花音さん?」
「はっ? え!? はい!」
「どうしたんですか?」
「い、いえ……。た、大変なんですね! 結城さんはいつも忙しそうで!」
いけない、いけない。思わず変な勘繰りをしてしまった……。
私の怪しい取り繕いに気付いたか否か。
結城さんは肩をひょいと持ち上げ、苦笑する。
「確かに忙しいは忙しいですけど、時間を見つけて休む努力は惜しまない方ですよ?」
「……え。へぇー……そうなんですか」