通りに飛び出した途端、わっと音の塊が耳に入ってくる。

裏通りの静けさとは真逆の中、私は音と人の波をかき分け前を急いだ。

すり抜けて。押し戻されて。

そんな事を繰り返しながら先を進んでも、一向に結城さん達に追い付く感じは無い。私は、以前この通りを結城さんと歩いた時の事を思い出した。

スイスイと人混みを難無く進んでいた彼。まるで周りの人達が道をあけているかの様に、スムーズに……。


「あ! ごめんなさいね!」

「いえっ……すみません」


大きなショッピングバッグを持った女性と肩がぶつかり、私の足はそれをきっかけに止まった。

もう、追い付けない。

人混みでも目立つ長身も、跳ねる金色髪もどこにも見当たらなかった。

楽しげな人々の笑い声が虚しく聞こえる。


「花音っ……大丈夫? どうしたのー? 急に」

「朋絵」


息を切らして追い付いてきてくれた朋絵に振り返り、


「結城さんがいた気がしたの。でも、見間違いかもしれないや……」


私は笑った。「ごめんね、急に走らせて」と、肩を上下させている彼女に言う。

朋絵は大きく息を吐くと、何言ってるの! と明るい声を出した。