「オカルトかい? そりゃ、面白い事を言うな、お嬢さん」

「だってこの辺って何だか雰囲気あるし! 何度も来てても迷いやすいとか……すっごい意味深!」

「確かにな。あんたさん達がそう思うならココは“そう"なんだろう。なぁ? そっちのお嬢さん?」

「えっ!? あ……私?」


不意に話を振られ、私はビクッと肩を震わせてしまう。まさかこっちに振られるとは思わなかった。

二人の会話を聞いてなかった訳じゃないのだけど、ついつい目は二人そっちのけで周りを探っていたので、ちょと挙動不審になってしまう私。

だってここにジッと立っていると、足元からすくわれる様な、なんとも言えない不安感が湧いてくるのだ。

人通りの無い細い道。入り組んだ場にあるのは静けさと異様さ。

ソワソワと胸が落ち着かない。


「私、オカルトとか怖いのはちょっと苦手だから……」

「え? 花音ってば、そうだったっけ!?」


素っ頓狂な朋絵の声に、男性はくくっと喉の奥で笑った。

ならば、と低い声が続く。


「じゃあ早く帰りな。悪い事は言わない。黒い影はすぐそこまで来ているよ」

「黒い影っ?」


朋絵が首を傾げた所で、男性のセカンドバックから携帯の呼び出し音が聞こえてきた。

自分を呼ぶ音に彼は気怠そうな表情をバッグに向ける。察するに、あまり歓迎している相手ではないみたいだ。


「夜の事だよ、好奇心旺盛のお嬢さん。――ああ……参った。怒られちまうのかね? サボっていた訳ではないんだが……」


意味深な単語の解説を朋絵に話した後、独り言をボソボソと零し……。それでも、電話の相手を待たせない様に素早く携帯を男は取り出した。