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「カフェー? あぁ、喫茶の事かい」


ハンチング帽の小さな小太りの中年男性が、朋絵の質問に首を傾げた。


「この辺はそういう店が多いからねぇ……」

「き、喫茶……? ま、いいや。やっぱり分かりづらい立地なんですか?」

「見ての通り、表と違ってコッチはやたら入り組んでるしね。あちこち路地の作りもそっくりな上、店の入れ替わりも激しい。何度来ても迷う人間は多いのさ」

「そっか~。じゃあ仕方無いよ、花音。そんなに落ち込まなくても」


振り向いた朋絵に肩を竦めて見せた。落ち込んでいるというより、どちらかというと納得いかない感じの方が強いのだけど、それを議論しても事態が変わる訳では無い。

迷う筈のない道で、私達は迷ったのだ。これは私的には有り得ない展開。


「お嬢さん達、目的の場所には行った事があるんだろう?」

「はい! 何度も! だから、迷わない自信あったんですけど……。不思議な事に……」


道が増えたりするもんで、なんて言って理解されるとも思えない。

一本道で迷いました……どう考えても普通じゃない。

私は、言いかけた言葉を濁した。