振り向けば歩いてきた道。

知ってるはずなのに知らない、変な感覚がちょっと気持ち悪い。

朋絵じゃないけど、道を間違えたのかと思った。お喋りに夢中になってて、うっかり違う通りに迷い込んだのか……と。

でも、目の前の店は確かに知ってるし、いつもと変わらずここに在る。しかもそこからさらに奥へと細く続く道は、見覚えある石畳の小路なのだ。

キョロキョロ辺りを見渡して、私は軽くパニックを起こしかけた。分かれ道が増えてたり店の様子が変わっていたり、絶対何かがおかしいはず。

それなのに、考えれば考える程、以前はどうだったかというこの辺りの風景が脳内でぼやけていく。

もしかしたら、本当はこうだったのかもしれない。いつも独りで歩いている時の方が、よっぽどぼんやりしていて、憧れ混じりの空想もプラスされていた……?


(初めて結城さんとここに来た時、本当に異国に来ちゃったみたいって思ってたしなぁ……)


妄想好き空想好きも、こうなると少し厄介な特技ってところだろうか。


緩やかにカーブする石畳の小路を見つめ、私は未だに変な感覚を胸に抱えていた。