「コッチの小路かぁっ! ヤダ、私間違ってたかも!?着かないわけだ―」

「なんか……違うんだよ……」

「え? あー、まぁ確かに違うよね。表通りとは雰囲気が。異国情緒、なんて花音言うからさ。入る通り自体間違えちゃったかと思ったよ。昭和な感じって言えばいいのに、花音てば紛らわしいんだから~」


朋絵は私の独り言を勘違いして、サッと小路に進んでいく。私は慌てて後を追って……、


「ちがっ……! 待って朋絵!」


ずんずん進む友の背を止めようとした。

ところが。


「あ、このお店可愛くない?」

「えっ……あれ!?」

「花音ってば、何その反応。いつも通ってるんでしょ? こういう所、大好物じゃないの」


小路を入ってすぐの所で朋絵が見つけたお店。

足が止まって、釘付けになった。


「……開いてる」

「何? 開いてるの珍しいの?」


真っ白な壁。煉瓦のアクセント。出窓が二つ。その間に入口のドア。

このお店はいつも見ている店となんら変わらなかった。一つ違うと言えば、いつもは出窓にはカーテンが引かれていて、入口のドアプレートが“CLOSED”だった事。

――私は、今までこの店が開いているのを見た事が無い。


(え!? でもこのお店があるってことは、さっきの分かれ道とか古本屋って……!?)

(ど、どうなってんの……?)