言葉を失ってる私は、朋絵には呆れてるようにも見えたのかも知れない。
私のすぐ後ろに建っているレトロな物件に視線を送り、その店? と聞いてきた。全然私の様子を可笑しく思ってる感じも無くだ。
「そこの古本屋のトコ入ってけばいいの?」
「……あ、いや……」
振り返れば古本屋。いかにも昔から此処に建ってますというそれは、入口の引き戸を思い切り開放している為、所狭しと本を積んでいるのが通りからでも見て分かる。
歴史を感じる木造のダークブラウン。
何かのテレビ番組で見た“昭和レトロ”ってやつだ。
だけど。
「ここ……」
私が知ってるのと、やっぱりちょっと違う。
そこはいつも古本屋。それは変わり無い。でも私が知ってるいつもの店は、ダークブラウンではなくライトブラウンで。
引き戸の昭和チックじゃなく、曇りガラスの洋風アンティークドア。
ついでにいうなら、ドアは前を通る度キチンと閉まっていた。小さな白いワゴンに“SAIL”と書かれた札と一緒に本が積んであるので、それで辛うじて私はここが古本屋だと知る事が出来た。
似てはいるけど、全く違う。
――でも、何故……?
一体何が起こってるの?