「もおさー、本当にカッコイイ人で! んで、爽やかなんだよ! 私にもまだあんな人と出会えるイイ運持ってたんだって思ったら、うっれしくってうっれしくって!」
在庫種類が豊富なのを褒めてくれたとか、また来ますと言っていた事とか。朋絵は半分夢見心地といった感じで話している。
駅が近くなるにつれて人通りも増えてきた道。
駅前大通りを横切る横断歩道はそんなに多くないので、信号の側には人が自然と塊になっていた。
「朋絵」
「んー?」
「さっき裏で言おうとして言えなかったんだけどさ。久しぶりにお茶してこうよ? 私まだ朋絵の話聞きたいな」
そして、指さす横断歩道。
「ほら、例のお店」
横断歩道から向こう側の道を指せば、朋絵は「おおっ」と小声で感嘆する。
「例のお店ですな! 行く行く!」
そうして私達も、信号待ちの人々の後ろに並んだ。
「花音に教えてもらった後も実は何度か行ってるんだけどさ。辿り着けたためしがないのよね、これが」
「そうだったの?」
「うん。前もチラッと言ったけど、なんかあの辺迷路みたいじゃない? 一本入ると。入った所間違ってんのかな? でもさ、あの辺りってば、表通りも似た作りの店ばっかでねぇ」
「テラス席があるカフェばっかだもんね」
青になると、速度の違う人間が白黒の線の上で忙しく交差した。
雑踏に響くのは信号機から流れる電子音楽。聞きなれたメロディー。