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午後四時。今日のバイト終了。

裏口から外へ出ると、店内とはまた違う騒がしさが風と一緒に流れてくる。

肩から下げるトートバッグを抱え直して、私は一息ついた。

その後ろからは、朋絵が元気よく飛び出してくる。


「ねーねー花音。田所さんに何したの?」


鼻の頭、擦りむけてたけど……?と朋絵は笑い、苦笑する私を通り越して、駅前通りを歩き出した。


「“花音ちゃんの一撃がー”……って凹んでたけど」

「んー。ちょっと不可抗力というか? 田所さんの発言に私がつい……」


とある記憶に動揺して、それを思い出させた彼に八つ当たりしてしまったのだと説明すると、朋絵はキョトンとする。


「ふーん? 花音でも八つ当たりとかそんなことするんだぁ。意外」

「するよ、そりゃ。八つ当たりぐらい。私をどんだけ温厚な人だと思ってるのよ?」

「だって私、花音が怒ってるの見た事無いもん。そういうイメージも無いし」


並んで歩く私達は、歩調少しゆっくりめで通りを行く。

真横を、サラリーマンが早歩きで追い越して行った。外回りの営業を追えて会社に帰るのかなぁ、なんて、忙しく行く後ろ姿に思う。

結城さんは、今頃仕事だろうか? あの人みたいに、昼間は社を出て歩き回ったりするのか……。未だに彼の職業を知らない私は、朋絵と話をしながらそんな事を考えた。