「揉めるのもなんだしさ。ここはとりあえず私が行ってくるよ? ほら、この間整理したばっかで色々把握してるし」

「ずるいよー花音っ。カッコイイ彼氏が出来たんだから、目の保養は必要ないでしょ? 今のその花音の恋愛大吉運、私にちょっとだけでいいからあやからせてーっ! おねがーいっ」

「えっ!? ちょ、朋絵! まった……!」


好機逸すべからず。朋絵は、まさにその言葉通りの行動で。

しまった! 三割増しの行動力を侮っていた……!


「……朋絵っち……!」


店内のBGMが一瞬大きく聞こえ……そして、ゆっくりと遠ざかっていった――。


「ごめんね、田所さん。朋絵のイケメンセンサーを馬鹿にしてたわ私……」


止める間もなく、売り場へ飛び出してった朋絵を見送る羽目になった私と田所さんは、力無くその場で立ち尽くすしかなかった。


「いや……。別に、朋絵っちを邪魔する気は無いんだけどねぇ、俺は」


たはは、と情けない笑いを零した後に「だけどなぁ」と呟く田所さん。


「どうもこう、俺的に嫌っていうか……」

「そんなに朋絵の事好きだったんですか?」

「えっ!? いや! 違ッ! そういう意味じゃなくてさ」


ブンブン頭を振る田所さんだったけど、耳だけすっかり赤くなってるのを、私は見逃さなかった。

イケメン、ねぇ……。

背が高くて眼鏡、という特徴を聞く前、もしかして結城さんが? とか思ってしまった事は内緒だ。


(だってほら、前にバイト先に行くみたいな事言ってた時あったから……。って! 別に期待して待ってた訳じゃ……ないんだから!)