「田所さん、何か隠してないですか?」
「分かった! お客さんすごい美人なんでしょ? だから自分で案内したいんだー。うわぁ、あからさまぁ」
朋絵が目を細くして田所さんの顔を覗き込むように言った。すると、田所さんはそれにこそ慌てて、
「違っ! 違うよ、朋絵っち! その逆――」
「逆? それって……イケメンってこと!?」
田所さんの口が「あ」と大きく開いたまま固まる。朋絵はそれを見て目を輝かせた。
ついさっきまでの私達の話が話だっただけに、今、朋絵の前でイケメン出現の情報はあまりにもタイムリーな訳で。
朋絵の喰い付きに、田所さんは顔を強張らせてしまった。
「どんな? どんな人?」
「……いや、背が高くって眼鏡の」
「眼鏡男子っ!」
「お、落ち着けよ、朋絵っち! いいか? この世の中には良いイケメンと悪いイケメンがいてだな! 俺が見るにアイツは悪いイケメンなんだっ! だから会ってはいかんっ」
「イケメンに良いも悪いも無いっ。端正なお顔を拝見して、なおかつお知り合いになれるこのチャンス……! 邪魔しないで田所さん!」
「ちょっとちょっと……二人とも!」
あからさまにも程があるでしょうがっ!
放っておいたら二人で口論しながら、我先にと売り場に出て行ってしまいそうだ。
ひとまず間に入って、一呼吸ふたりに入れさせる。
と、田所さんと朋絵が同時に私を見た。双方のなんかすがる様な視線にちょっと嫌な予感がする。