「そ、それはまぁちょっと別として。結城さん、ホントに素敵な人なのよ……」

「分かってるって。実際私はまだ見た事無いけどー。花音の話聞いてると、いい人なんだろうなってのは良く理解できてマス」


ひょい、と肩を上げ、朋絵は私にウインクして見せた。


「花音の選んだ人だよ? 絶対間違いないって私にはわかる」

「……ふふっ。ありがと」


そっか。朋絵はまだ結城さんに会っていないんだった。零さんとはニアミスがあったけど、彼とはそれすら無かったんだ。


「あのさ、朋絵」

「ねぇねぇ、花音」


私達の声が重なった時、お店で流れている有線の音楽が一際大きく聞こえてきた。誰かが、売り場とを区切るドアを開けた証拠だ。

朋絵が慌ててコミックスを抱え直した。私も口を結び入ってきた人物を探る。


「朋絵っちー? いるー?」


のほほんとした声は田所さんだった。

緊張が一気に緩んだ瞬間。

朋絵は「人騒がせなっ」と小声でむくれた後、


「はいはい、こっちですー。コミックス在庫ー」


持っていたコミックスをゆっくりおろした。