* * *


「ふ、おぉおおおお」


目を大きく見開いて、朋絵は可笑しな声を出した。

コミックス数冊を抱え、その場で足踏み。

人目が多い所だったら、確実に「なんなの? あの人?」の痛い視線に囲まれるところだ。

しかし幸いにも、ここはバイト先の書店のバックヤード。朋絵のこの奇行は、私だけにさらされている。


「イケメンドSの独占欲キターッ!」

「なにそれ」

「結城さんに決まってるでしょっ。もうもう! 花音ったら、なーんにも教えてくれないからぁ! いつの間にそこまで進んでたなんてさー!」

「いつの間にっていうか……。告白されたのはつい昨日だもん……」

「で、で? お付き合いすることになったワケね?」

「うん……」

「おめでとーっ! いや、もう羨ましいわホント! 花音はイイ子だからさ、いつか素敵な人と結ばれるはずって、ずっと思ってたよ!」


未だに昨日の事が夢なんじゃないかと思ってる私より、朋絵の方がいち早く現実として受け止めて、しかも私よりはるかに高いテンションで喜んでいる。