深い口付けが続くと息が苦しくなってくる。
許された一瞬に大きく息を吸うと、一気に流れ込む空気にむせ返りそうになった。
「……花音さん」
触れるだけのキスをした後結城さんは身体をゆっくり起こす。呼んだ私の名前が、静かに私達の間に落ちて。
「?」
「今日起きた事、全部教えてほしいと言いましたよね?」
「は、い……?」
まだ少し息切れ中。甘ったるい口付けの中、私の頭は完全に溺れかけた状態でぼんやりしていた。
だから少しの間気付けなかった。
……結城さんの瞳に。
静かな言葉に表れてる意味を。
「――零に会いましたね」
まばたきを数度繰り返す内、意識は急激に浮上した。
心臓が一拍飛んだと思う。間違いなくその一瞬。
「な、んで……っ」
(なんでそれを?)
言葉が震えた。
見上げた結城さんの瞳が真っ直ぐ私を見下ろしている。柔らかく優しい色だった薄茶が、色を変えず温度だけを変えていた。