「返事は? 花音さん?」


もう一度、結城さんにそう迫られる。

今更ながら、自分が押し倒されてる態勢だって事を再認識してしまい、私の顔は一気に熱くなってきた。こくん、となるノド。それがやけに耳に響いて、また更に恥ずかしくなる。

気が付けば、指先が小刻みに震えていた。

怖い? ――違う。

恥ずかしい? ――それもあるけど。

なによりも。――多分。


(好き、って言ってくれた……。私の事、好きって……!)

(うれしい!)


初めて会った時からドキドキが始まって、今までずっと同じドキドキが続いていた気がする。

……ううん。日毎強くなってたときめくキモチ。

振り回されても、強引に引っ張られても嫌じゃなかったのは、私もこの人の事を好きだったからなんだと改めて感じる。でも、


「私……。わたし、も……」


好きです

の言葉が、緊張で出ない。

せめてもと、自分の精一杯の想いを伝える為に、曖昧じゃない頷きで答えた。


「そうですか……。良かった」


結城さんの微笑みが、今日一番に柔らかく見えた。薄茶の瞳がふんわり細く。


「これでやっと……」

「……あ……」


近付いて、傾く彼の綺麗な顔。予感に目を閉じた。


「………」


何度も合わせた唇の甘さは、前だって今だって同じはずなのに……何故か違う。

気持ちが触れ合えるとこんなにも変わるものなのだと、今日はちょっぴり余裕すらある心の中で思った。

ただ甘いだけじゃない。


――その中にある“変わった何か”は、一体何なのかな?