だからと言って、私は最初に抱いていた様な、超紳士なイメージを結城さんに再び持つことは無いだろうと思っていた。

 あまりにも、プラスアルファされたイメージが強烈過ぎるからだ。……色々と。

 謎めく結城さんは、一体何者なのだろう?何を考えている……?

 愛想が良くて、物腰柔らかで、料理上手な美麗なる紳士。

 しかし、その実……出会ったばかりの隣人女子に、過度なちょっかいやら、極甘キスを仕掛けてくる様な危険人物。

 そして、笑う。優しく、妖艶に。さらには動揺する相手を見て……楽しげに。

 その笑みに潜めているのは、何なのか……。

 自分の部屋に送ってもらった後、私は一人ウンウン唸りながら頭を抱え、延々考えまくっていた。考え始めたらキリが無い。彼は、謎だらけだ。

 でも……いや、だからこそ、どうしても気になってしまう……!

(どうして、私の明日の予定を知っているの!?)

 そんなくだらないプチ情報なんて、話した覚え……無い。

 超能力者? 千里眼? どのみち……ただモンじゃない事だけは、確かだ。

 マズイ。

 何か妙な予感めいたモノを感じた。第六感は鋭い方じゃないけれど。

(もしかして、とんでもないお隣りさんが引っ越して来ちゃったんじゃ……!?)

 何度も思いだしてしまう唇に僅か残る鮮烈な甘さと温度に悩まされながら、私は眠れない夜を明かした。

 昨日までこっそり想像しちゃってた、『素敵なお隣りさんと恋の予感?』――なんて、麗しいドラマ。

 しかし、どうやらそんな想像みたいに“オイシイハナシ”にはならない感じがヒシヒシとして……

(これからどんな顔して会えばいいんだ……!)

 明日からの日々が、ちょっと複雑だ。