「……」


結城さんの恋愛論はなんだか……哲学的?

確かに、間違ってない気もするけど……。言葉が畏まってるせいなのか、なんか現実感が乏しいような。


「……いえ。違わないですけど……」


ポツリと返したら、薄茶色の瞳がより近付いてきた。それ以上近付かれると鼻先触れて、唇まで触れてしまいそう。

至近距離も度が過ぎると心臓に悪い。そっと頭を後ろに引こうとした。だけど、後頭部はすぐ壁に当たり移動不可に。

……いや。正確に言うと、壁じゃなく結城さんの手。私が後退するのをしっかり察知し、逃げ場を塞いでいた。


「それならば……私の言っている事、分かって下さいますよね?」

「でも、結城さん……。それじゃあ、まるで私に恋してるから私の事全部知りたいって言ってるみたい」

「だから、前からそう言っているじゃないですか」


呆れ顔で言われ、そうだっけ? と振り返ってみる私。

考える。考える……。

こちらが勘違いしそうな行為、否、好意? はそれはもう沢山……。

でも言葉は?

告白さえあれば……なんて思ってしまった時もあった。それこそ、確定的な何か(言葉)が無かった証拠になるんじゃ……?


「ああ……そうでしたね。すっかり伝わっているものと思っていましたので。関係を築く上で“言葉”は重要でした」


思考を右往左往させていたら、結城さんが納得の表情を見せ……。

私の視界は、その後ぐるッと勢いよく変わる。……あれ? 天井が……。