「ああ……! 花音さんの一番のお友達、朋絵さんですか。バイト先も一緒の」
「……ですね……」
やっぱり……よくご存知のようで。
その情報網で私の一日も本当は全部知ってるんじゃないか?
……なんて思ってしまいそうになった。
だけど、「藤本さんと一緒だったんですか。随分仲良しになられたんですねぇ」と笑っている所を見ると、やっぱり情報網にも限界がある様子。
「あ、そういえば」
だったらと、藤本さんのオムライスの件も話そうとして、私はそれを……思わず止めていた。
零さんの顔が脳裏にちらついたのだ。彼から話を聞いて、と説明すれば、当然学食で会った事も言うことになる……。
ここまで彼の名を出さなかったのは意図的にじゃない。ただ単に忘れてたから。
でも、結城さんの零さんに対しての態度や私に向ける警告の事など考えると……このまま彼との事はふせておいた方がいいんじゃ……?
「……“そういえば”?」
「あ。……いえ、藤本さんのお話を色々聞きました。オムライスの事とか……」
「おや。彼はそんな事まで話してくれたんですか」
あれ? 知ってたんだ。なんだ。
でも、それもそうか。お店の常連同士、私なんかよりずっと前から知り合いなら、零さんが知ってる様に結城さんが知ってても不思議じゃないよね。
ひとまず零さんの事は表に出さずに済んだ。結果隠してる感じにはなったものの、彼と二人でいたと聞いて、また結城さんの「あれほど言ったのに!」的な地雷を踏むのは避けられたのだから……。よ、良しとしようっ。
(――本当に結城さんと零さん、何でここまで距離感あるのかなぁ……)