うん。猫だよね、やっぱり。
鳴き声の主を確認しながら、私は後ろ手に窓を閉めた。
迷い猫なら保護しなきゃ。いくら猫は結構アクロバティックなのだとはいえ、七階から落ちて平気な訳はない。
それに、例え他の家のベランダに入ったとしても、このマンションがペット不可だったらそれこそ大騒ぎになってしまう。
うちで保護して……。管理人さんにそれとなく疑問を確認して……。
なんて手順を考えつつ、小さな存在に向き合った。
「ねぇ? 君、どこの子?」
「…………」
「ここのマンションのどっかに住んでるのかな?」
「…………みゃーぅ」
「…………」
これで会話が成り立つなら苦労もない。
私の問いかけに、猫はキョロキョロ小さな目を動かして部屋を見渡している。
やがてピョンとベッドに飛び乗ると遊び始め、今度はベッドカバーのレースに爪が引っ掛かり何やらジタバタと……。
あ! あ! レースが……!
「こらこら! 暴れちゃ駄目だって!」
慌てて猫を抱えた。
爪に引っ掛かったレースをそっと外す。
見知らぬ相手に触られて拒否反応を示すかと思ったけど、子猫は大人しく私の手の中に納まってくれた。