『警察は、現在重体の運転手の回復を待ち事情聴取するのと合わせ、運転手の勤務状態も調べると――』


決して自分に起きた偶然を忘れていた訳じゃなかったから、この話題はどんなニュースよりも敏感に反応してしまう。

画面に原形を崩したバスの映像が映った所で、手は無意識にチャンネルを変えた。

リモコンを持つ手は動揺で少し震えていたのか、チャンネルはバラエティ番組を二つ程通り過ぎ、違うニュース番組で止まり。


『容疑者は怨恨から――』


そのニュース番組でも、暗い話題――殺人事件を報道していた。

……溜息が出る前にテレビを消す。


「あー……。なんだかな……」


でも結局、静かな部屋に溜息は落ちた。


なんで、世のニュースは暗い話題ばかりを流すんだろう。明るいニュースだって、もっと沢山あるはずだ。

死亡者の数より出生者の数を発表すればいいのに。

これこれこういう訳で人が亡くなりました、って話じゃなくて、こんな大変な事もありましたが無事に生まれましたよー、って話の方がずっと素敵じゃないか。

明るいニュースがいっぱい流れたら、人の気持ちも良い方向に向かうかもしれない。そう思うのは、私がまだまだ世間知らずな子供っぽさを残してるからなの……?

うーん、とクッションの上に顎を乗っけたまま、私は誰に問う訳でもなく唸ってみた。

当然、答えなんか出ないけど。