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零さんと分かれた午後、足取り軽く店に向かった私は、案の定店に居た藤本さんと一緒にお茶をした。
私が自分の通う大学で零さんと会った事に藤本さんはとても驚いていたけれど、彼に教えてもらった話をすると少しはにかんだ様子で「実はそうなんです……」と告白してくれた。
もう随分と前から食堂のオムライスのファンだったらしい。今まであそこで会う事は無かったのに、ここで会うなんて不思議な縁ですよねーと私達の話は弾んだ。
本日の店番はセツナちゃん。ナユタ君は今日もお使いに出ていて会う事は出来なかった。あの元気な笑顔が見れなかったのは少し寂しかったかな……?
夜までたっぷり店に居座って、自宅に帰ってから軽く夕食を済ませた私は、その後の手持無沙汰の時間を消費すべくベッドに寄りかかりクッションを抱えテレビをつけた。
昼間色々な人とお喋りをしたりすると、夜一人で部屋にいる静かさが倍増する気がする。
テレビから聞こえる一方通行の話声でも欲しい気分になるのだ。
『続いて、先日の美咲が丘のバス事故についての続報です。乗客や目撃者の証言から、バスは横転する前に蛇行運転を繰り返していた事が判明しました』
テレビからキャスターの淡々とした声が聞こえる。思わずギクリと、動きが止まってしまっていた。