「恋とは、一瞬の勘違いと引きずる熱、犠牲の上にあるもの。また愛とは、続く幸せとあたたかさ、悲しみと苦しみを永遠に受け入れる覚悟の結晶……」


突然囁かれた言葉。

双子は、それを発した紡に首を傾げて。


「それは……なんですか?」

「藤本さんの言葉です」


紡は微笑みを苦笑に変え、


「彼の言葉は深くて中々に興味深い。私もそれなりに生きていますが、全部を理解するにはまだまだの様です……」


指先でこめかみを弾く。


「いずれこんな言葉を理解する日も来るんでしょうね。……此処に居れば」


紡の言葉に、セツナとナユタは顔を見合わせた。

好奇心に満ち溢れた少年と少女が、オッドアイを煌めかせる。


「私も何かを知ることが出来る?」

「ボク、知りたい事たくさんあります!」


二人は紡に答えを求めた。

小さな店主たちの問いに、紡は頷き「ええ、きっと」と返し。


「ですから、それまではキチンと仕事をこなし、“それなり”にしていなくては駄目ですよ? 二人とも」


紅茶のカップが、かちり、と音を立てた。

細い紡の指先がカップを絡め取る。


「はい! ご主人様(マスター)!」


双子の元気な返事に、紡は瞳を細め微笑んだ。