ピリピリしている零をよそに、紡は残りの紅茶をゆっくりと味わっていた。

その行動が更に零をイライラさせているのだが、彼にはそれも解っていて、あえてそうしている様な素振りにも見える。

間で見ているナユタは、いつ零が暴れ始めるかとびくびく小さい身体を縮こませていた。


(わー……お願いですから、それ以上刺激しないでください~!)


零は怒り始めるととても面倒な人物なのだ。ナユタはそれを昔からよく知っているだけに、ここでの無用な争いは避けてほしくて堪らなかった。

苦労して集めた飾り棚のティーセット。壊されたら本当に困る……!


「関係の無い人間まで巻き込むのは感心しませんね。私の仕事を邪魔することも、煩わせることも、やめていただきたいものです」

「欲しいモノを手に入れる最大のチャンスに、手を抜くバカがどこにいるんだよ。他の事なんか知るか」

「………」

「それに最終的な辻褄合わせは、ソッチの十八番だろ? しょっちゅうやってるじゃねーか」

「……辻褄合わせだけが仕事じゃないんですよ、こちらは」


一層低い声で、紡が呟いた。