「……もう、意味わかんない」


 私は考えることを放棄した。


 誰もいない公園のベンチで、足を抱えて座る。


 すると、急に肩をたたかれた。
 私は必要以上に驚き、振り向く。


「ここにいたんだね。探したよ」


 そこに立っていたのは、あの人だった。
 私はその人から目をそらす。


「……私は、ハルじゃない」
「あれはあだ名みたいなものだよ」
「あなたにそう呼ばれてた覚えはない」
「……そっか」


 寂しそうな声につられて、私はその人の顔を盗み見た。
 今にも泣きそうな顔をしている。


「どうして……どうしてあなたが、そんな顔をするの?泣きたいのは私のほうなのに。どうして……!」


 もう、自分が何を言っているのかわからなかった。
 だけど、どうでもよかった。


 考えて話す余裕なんてなかった。


 思ったことをぶつけてしまえ。
 この人なら。優しいこの人なら受け止めてくれるだろうから。


「本当、自己中心的な人」


 木陰から現れたのは、あの女だった。


「自分のことしか考えられない上に、自分を悲劇のヒロインだと思ってる。脳内お花畑もいいとこ」
「アキ、その辺にして」


 その人は女の名前を呼んだ。