ゆっくりと暗闇に光が差し込んできて、一番に目に入ったのは白い天井だった。
 少しずつ、視界が開けていく。


 動かない体だけど、左手にぬくもりを感じた。
 そっと視線を動かす。


「リ、ク……?」


 夢だと思ったけど、痛みとぬくもりを感じているのだから、違うのだろう。


 リクは私の手を握って眠っていた。
 名前を呼ぶけど、リクは目を覚まさない。


 どさくさに紛れて、私はリクの手を握り返してみる。


「ん……」


 リクの声がして、思わず力を緩める。
 リクは反対の手で目をこすりながら、体を起こした。


「陽菜……!?」


 私が目を覚ましていることに気付いたリクは、目に涙を浮かべた。そして声を殺して涙をこぼす。


「よかった……本当に、よかった……」


 それから私は精密検査を受け、何があったのかをリクから聞いた。


「じゃあ、ハルはもう……?」
「わかんない。もしかしたら出てくるかもしれないし、消えてるのかもしれない」


 だけど、消えようと決めた私がこうして目を覚ましているということは、ハルが消えてしまったということだろう。


「そっか……ハル、負けちゃったか……」


 演じていたことを知られてしまって、あの人とアキには嫌われたと思う。