あの人もアキもいつの間にか泣いていたみたいで、二人とも涙を拭っていた。


 あの人は紙とペンを出してくれた。


「何するの?」
「手紙書こうと思って。晴香に」


 アキの質問に答えながら、ペンを執る。


 ハルに言いたいこと、たくさんある。だけど、小さなメモ用紙にそんなにたくさん書けなかった。


 本当に言いたいことだけを書いた手紙は四つ折りし、リクに渡す。


「これを、ハルに渡してくれないかなあ?」


 自分でもわかるくらい、眠そうな声だった。
 当然リクも気付いて、リクの涙はさらに溢れてきた。


「……ちゃんと渡す」


 リクが受け取ってくれたことに安心し気が抜けたのか、私はリクの膝を枕にして倒れてしまった。


「ヒナ……」


 リクの不安そうな、穏やかな声が上から聞こえてくる。だけど瞼が重くて、リクの顔が見れない。


 最後くらい、愛しい人の顔を見たかったのに。
 あの人の名前だって、聞いてないのに。
 初めてできた友達と、もっと過ごしたかったのに。


 そんな簡単なこともできないなんて。
 ハルに残した言葉は間違ってなかったな。


「みんな……迷惑かけて……ごめん、なさい……ありが、とう……」


 そしてそのまま意識を手放してしまった。