「そういうこと。ハルは腹黒なんだよ」


 今まで聞いてきたハルの人物像が、一気に崩れた。
 それと同時に、ハルを憎いと思った。


「ハルはヒナに感謝してた。生きられなかった自分を、呼び覚ましてくれたって。その礼なんだって。つらい経験をすることが。でも、ヒナがいい思いをすることは許せないって」


 私以上に、リクがつらそうな顔をした。


「生きたかった自分が死んで、つまらなそうにするヒナが生きていることが許せなかった。だから、ヒナの人生を奪った。……自分勝手が過ぎるよな」
「ハルさんを消せば、いいんじゃ……」


 アキは苦しそうに提案した。
 ハルを慕っていたアキからしてみると、今の話は信じたくないだろうし、ハルが消えることは何よりもつらいことなのだろう。


「何度も考えた。でも、消えなかった。ハルの執念の強さに、負けてしまった。だから、直接言った。消えてくれって。そしたら……死ぬって言われた」


 言葉が出なかった。
 吐きそうになって、口に手を当てる。


「俺は……どんな形でも、ヒナを残しておきたかった。だから、ヒナ自ら消えることを願うように仕向けた」
「ヒナが消えてどうなるの」


 アキの言う通りだった。
 私を残したいなら、消えてはいけないのではないのか。