ここまで来てしまえば、怖いものなんてない。
 それどころか、さっき聞かされた話が嘘となると、真実を知りたいと思った。


 私は首を縦に振る。


「……わかった」


 そう呟いたリクは、どこか悲しそうに見えた。


「ヒナには双子の妹がいたんだ。でも、五歳のときに死んだ。体が弱くて、病気で。そのお見舞いに行く途中に、両親が事故で死んだ。ハルの入院費、手術費のために借金をしていたせいで、二人は親族からのけ者にされていた。だから、ヒナの引き取り手がなかったんだ」


 当然のことだが、私はそれを知らなかった。


「死んだ妹の名前はハル。前川晴香だ」


 全員息をのんだ。
 黙ってリクの話を聞く。


「ハルは明るく元気な子で、ヒナは内気だったんだ。それで、家族三人が死んだとき……ヒナはハルを呼んだ」


 言っている意味がわからなかった。


 死んだ人間、ましてよく覚えていない人間を、どう呼ぶというのだろう。


「ハルが教えてくれたよ。ヒナに呼ばれた。ヒナは、無意識のうちに明るく強かったハルに憧れ、強いハルになりたいと思ってた。だから、自分はここにいるってね」
「じゃ、じゃあ……ハルさんは、人格の入れ替わりを知っていたってこと……?」


 アキの動揺した声の質問に、リクは頷く。


「待って待って……だとすると……ハルさんは、意図的にヒナにつらい思いをさせてたっていうことに……」