「じゃあ……考えたくないけど……お兄ちゃんが浮気をしていたってことにならない?」


 アキの言うことを、私も信じたくなかった。
 ハルを重ねていたとはいえ、優しくしてくれたあの人が、ハルを裏切るような……


「……あ」


 あることを思いついた私は、自然と言葉がこぼれた。
 話すことがなくなった二人は、私が続きを言うことを待っている。


 まだまとまっていないけど、とりあえず初めから話してみようと思う。


「私が初めてあの人と会ったとき、私は彼氏が浮気をしていたって言った」
「初対面でいきなりそんなこと言ったの?」
「あの人に、声をかけられて、何があったのって聞かれて……」


 そうだ。あの日、私はあの人に声をかけられたんだ。
 あのときあの人は……どんな表情をしていた?


「お兄ちゃんは、ハルさんだと思って声をかけたんだと思う。だから……驚いていたと思う。自分の彼女が目の前で彼氏がーって言うんだもん」


 アキの言う通りだ。普通に記憶喪失になったのでは、と思うだろう。


「でも、私はそのとき、間違いなく、その浮気相手が自分の元カノだって言われた」


 この情報に、嘘はない。私の作り出した記憶でもない。
 まぎれもない事実だ。


「なんで、お兄ちゃんはそんなこと……」