動揺する私の言葉に続けて、彼が言ってくれた。


「私たちの関係を勝手に勘違いした原因がそうだとして……なんで私とお兄ちゃんが恋人同士だったとか思ってたの」
「あの人に、そう聞いた……から……」


 そう言いながら、自信がなくなった。
 本当に、あの人が言っていたのか。


 ううん、確かに言っていた。アキが、自分の元カノだと。
 今までの記憶は頼りないけど、ここ一か月の記憶は確かだ。


 だけど、私が彼が浮気をしたって話して、どうしてあの人はその浮気相手を元カノだと思うって言ったんだろう。


 私をハルだと思って私に声をかけたのなら、私の発言がおかしいと思うはず。


 彼氏である自分を目の前にして、そんな話をされたのに。誰を彼氏だと言っているのか、その彼氏の浮気相手の顔なんて、知らないはずなのに。


 あの人は……何かを、隠してる……?


「これ以上は、ハルに戻らないと何にもわからない」


 私が終わりのない思考の迷路に迷っていたら、彼がため息とともに吐き出した。
 まとまっていなくても言うべきかと思ったが、どう言い出せばいいのかわからず、私は黙るしかなかった。


 部屋は静寂に支配されてしまう。


「……ねえ」


 すると、アキが暗い声を出した。
 私と彼はアキの話に耳を傾ける。


「ヒナが感じたっていうのは、ハルさんの嫌な気持ちになったときの記憶ってこと?」
「まあ、簡単に言うとそういうこと」